2009-02-04(Wed)
何を望んで、酒を飲む
みなさん、お久しぶりですギュルヴィです。
最近はいろいろな事情が重なり、SSを書くことすらままならぬ状況になっていて・・・
SSを書ける状況になっても、どうやらスランプのようであまりネタも出ず・・・今日までかかってしまいました。
大変申し訳ございません!
これからも忙しい期間が続くので、更新もかなり不定期になってしまうかもしれませんが出来ればご了承ください。
皆様、どうかこれからもギュルヴィをよろしくお願いいたします!
さて、それではコメント&拍手返信に移りましょう。
コメント
キンシ さん>
良作でしたね!
俺は最後まで読み終えて、
ちょっと泣いた・゚・(ノД`)・゚・。
もっとこのカップリングの話を見たいなー
コメントありがとうございます!
楽しんでいただけたようで何よりですが、どうも百合は書きにくくて・・・orz
とりあえず、落ち着いた頃にまた挑戦してみようかと思います。
こーいち さん>
お久しぶりです。読みましたよ~^^
すごくほのぼのとした感じで、読んでるこっちもとっても和んじゃいました(≧∀≦)
大晦日の静かな雰囲気が出ていて良かったと思います!
僕も東方やってみようかなぁ………
と、いうわけで、それではっ
コメントありがとうございます!
大晦日って、何だかこう言い表し難い雰囲気ですよね。
そんな感じが表れていたなら、こちらとしても嬉しい限りです。
東方はぜひやってみてください!おススメしますよ!
狸里モスマン さん>
遅れましたが、あけましておめでとうございます。
ホノボノとした日常SSでいいですねぇ。
また自分もまったりお正月過ごしたい…!
羨ましい!
コメントどうもありがとうございます。
俺もまた、正月に戻ってゆっくりと休みたいです・・・
あ、でもそうするとまた地獄を過ごさなきゃならんのかorz
蒼煌の月 さん>
友希が来てることに今さっき気が付きました…馬鹿な奴ですみません><。
なにとぞよろしくお願い致します(汗
自分もそのうち何でもいいからSSを書いてみたいです…が、意外と難しいorz
頑張って下さい!
いえいえ、こちらこそよろしくお願いいたします。
SSは、確かに難しいですよねぇ・・・
もうホント、上手いSSを書ける人が羨ましい!妬ましい!(ぇ
応援ありがとうございます!頑張りますよ!
拍手コメント
- さん>
いかにも二人らしい年の越し方な感じが良かったです。魔理霖はこういう雰囲気が一番似合いますよねぇ
拍手ありがとうございます!
魔理霖は書きやすいんですが、どうにもうまく雰囲気を出しづらいんですよね。
甘々にしようとすると、どうにも詰まって・・・
やっぱり、ほどほどが一番ですかねぇ。
それと、リンクを1件追加しました。
『オーバーボーダーあらかると様』
東方は扱ってないようですが、バカテスやシャナなどの面白い二次創作SSを掲載なされています。
是非、一度見てみてくださいね!
さて、更新が遅れたお詫びに今回も載せます。
ちなみに咲霖SSです。
ああ、咲夜さんって難しい・・・orz
SSは追記からどうぞ~
はい、という事で咲霖SSに初挑戦です。
咲夜さんって、書こうとするとどうも難しい・・・
SSを見たいという方はこのまま画面をスクロールさせてください。
それでは、どうぞ~
倉庫を漁っていると一本の酒を見つけた。
何年か前に霧雨の親父さんから貰ったもので、魔理沙や霊夢たちが普段飲んでいるような酒とは価値が数段違うような銘酒だ。
そんな物を何故僕は倉庫にしまっていたのかと少々首を捻ったが、魔理沙たちに飲まれないようここに隠した事を早々に思い出したのでそんな疑問は速攻で捨て去る事にする。
とにかく、これほどまでの酒を見つけたからには飲まないと言う手はない。
誰も店に来ていない時に見つけたのは僥倖であり、こんな物を一人で飲めるという贅沢を味わえるのだ。
あえて言うなら今現在これに見合うだけの肴が無い事だけが不満だが、流石にそんな贅沢を言ってもしょうがないだろう。
それに、美味い酒を一人で静かに飲める。これほどまでの贅沢が他にあるだろうか。
騒がしい紅白や白黒から見れば何処がいいのか分からないのかもしれないが、僕から言わせてもらえれば騒がしく酒を飲む事の方が分からない。
別に誰かと酒を飲むのが嫌な訳ではないが、それでも鯨飲馬食でうるさく酒を飲むのは嫌いだ。
そういう酒の飲み方は天狗との花見で嫌と言うほど体験済みだし、嫌と言うほど嫌いになっている。
……ああ、いつの間にか話がずれてしまった。
とにかく早く店に戻ってこの酒を飲もう。
さっきはいい肴が無いと思ったが、外を見ればいつの間にか雪が降っている。
雪見酒。
ありきたりな飲み方ではあるが、中々風情がある。
そんな事を考えながら、僕は一本の酒を抱えて我が愛しの店へと戻っていった。
何を望んで、酒を飲む
著者:ギュルヴィ
お猪口と酒を盆に置き、裏庭の縁側に持っていく。
裏庭には雪が若干ながらも既に降り積もり、既に銀世界の様相をかもし出している。
明日は雪かきに勤しむ日になりそうだ。
……いや、明日の事を考えるのはやめよう。せっかくの酒がまずくなってしまうじゃないか。
雪かきと言う単語を無理やり頭から排除して、お猪口に酒を注いだ。
そして雪を見ながら、お猪口の中身をぐいっとあおる。
「……美味い」
……思わず声に出してしまう。
それほどまでに、この酒は美味い。
この酒についてとやかく言うのは、もはや意味の無い事だろう。
本当にいい物というのは言葉では表せない物なのだ。
この酒が美味しいと伝えるために僕が出来るのは、せめて美味そうに酒を飲む事ぐらいである。
そう思い早速おかわりを注ごうとした、その時。
「あれ?」
僕の手から、お猪口が消えた。
落したのではなく、本当に消えた。
こんな芸当が出来る人妖は二人ほど心当たりがあるが、そのうちの大本命である八雲紫は今頃冬眠しているはずなので彼女ではありえない。
となると、容疑者は一人しかいない訳で。
その容疑者がいるとすれば、おそらく……
「あら店主さん、こんなところで店番もせず何をしているのかしら」
……予想通り、後ろを振り返ると完璧で瀟洒なメイドの姿があった。
無論手に僕のお猪口を持っている。
十六夜咲夜。
完璧で瀟洒な紅魔館のメイド長であり、僕の店の数少ない”客の”常連だ。
「君こそ、いきなりお猪口を取るなんて何を考えているんだ。早くそれを返してくれ」
「お断りしますわ。そんなに美味しそうなお酒なんですもの、あなた一人で飲むにはもったいないと思いません?」
次の瞬間、今度は酒が手元から消えた。
その行き先は当然彼女の手の中である。
「……咲夜、君は僕の至福の一時を邪魔して楽しいかい」
「まあ、人聞きの悪い。私はただ一緒にその時間を楽しみたいとお願いしているだけですのに」
「そもそも君はここに客として来たのかな、酒を飲みにきたのかな」
「勿論客として。お嬢様が突然かぼちゃが欲しいと言い出しまして、ここにならあるかと思って来たのですが」
手に酒とお猪口を持ちながら、彼女は話す。
そんな事を話しながらお猪口に酒を注ごうとしているあたり、”客として来たけど酒を見つけたから飲みたい”という事だろうか。
「かぼちゃなら台所にあるよ。それはともかく、早くそれを返して……」
「あら、このお酒美味しい」
「……」
「店主さん、どうかしました?」
「……いや、何でもない」
どうしてこう、僕の周りの少女達は。
話を聞かない云々以前に、そのお猪口は元々僕が使っていた奴で、それをそのまま彼女は使った訳で。
ひょっとして僕は男として見られていないんじゃないのかとさえ思う。
「それで店主さん、結局ご一緒しても?」
「別に構わないよ。騒ぎさえしなければ、ね」
「勿論です」
そう言って、彼女は僕の隣に腰を下ろす。
いつの間にか手にはお猪口を二つ持っており、そのうちの一つに酒を注いで僕に手渡してきた。
何時の間に取ってきたとか、そういう事はいつもの事なので考えない。
理解出来ない事は考えないに限るのだ。
「そういえば、肴は何ですか? 何処にも無いようですが」
「肴かい? ちゃんとあるじゃないか、よく周りを見てくれ」
「周り、と言われましても見る限り銀世界と家屋の織り成す風景しか見えません」
「なら空を見てくれ、それなら分かるだろう」
「雲が見えますわ」
「雲じゃない、他に見えるものだ」
「家の屋根も見えますね」
「違う、屋根でもない」
「あら、屋根に蜘蛛の巣が。もうちょっと掃除した方がよろしいのでは?」
「蜘蛛の巣でもない、雪だ雪。雪を肴にして飲んでるんだ」
いくら何でも蜘蛛の巣を肴にはしないだろう。
もちろん彼女も本気で言っている訳ではないのだろうが、それでもこの少女は何かずれている気がしてならない。
どこかの天才よろしく、完璧な人間とはどこかがおかしいものなんだろうか。
「分かってます、ほんのいかした冗談ですわ」
「どうも君が言うと冗談に聞こえなくてね。……それでどうだい、雪見酒は不満かな?」
「不満と言う訳ではありませんが、こう……物足りない気がします。せめて月が出ていればよいのですが」
「月、かい」
「えぇ、月を見たいですね。それも綺麗な、眩しい位の十五夜が」
……月か。
確かにそんな月を見ながらこんな酒を飲めれば最高だが、今は雪が降っている。
雪が降っているという事は雲が出ているという事であり、雲が出ている限り月が見える事はない。
雲の切れ目にひょっこりと見えるという事もあるが、雲は空全体を覆っていてその切れ目さえなかなか現れそうにない。
今日月を見る事は、ほぼ絶望的だろう。
「月は、今日は見れないだろうなぁ」
「見れませんかねぇ」
「十六夜なら君がいるけど、君を見ても仕方がないし」
「あら、何か失礼な事を言われたような気がします」
「気のせいだと思うよ」
そんな事を話しながら、二人で酒を飲む。
酒は美味いし、誰かが騒ぐ事もない。
まさしく僕の理想的な酒の飲み方である。
……出来れば、もうちょっと情緒のある人と飲みたかったと言うのは流石に贅沢か。
そんな事も考えながら酒を飲んでいると、彼女が話しかけてきた。
「店主さん、お台所をお借りしてもいいですか? やはり何か肴を作りたいのですが……」
……ふむ。
紅魔館のメイド長ともなれば、料理の腕も相当なものだろう。
そんな料理を食べながら飲むのも悪くは無い、悪くは無いのだが……
「貸してもいいが、生憎食料がさっき言ったかぼちゃしかなくてね。君のお嬢様の願いが叶えられなくてもいいのならご自由にどうぞ」
「かぼちゃだけって、普段食べているものとかもあるでしょう?」
「残念ながら僕は食べなくても生きていける体質なんだよ。食べるものといったら、酒の肴や魔理沙達の作る飯ぐらいしかない」
そう、僕はなぜか食べ物を食べる必要性が無い。
だから普段から食べ物を三食食べる習慣とかはないし、普段から食べ物を備蓄している訳でもないのだ。
ただ、たまに魔理沙達が飯を作る時があるので時々食料の補充はしているが。
「……それじゃ、何か他に肴になりそうな物は?」
「そうだね、雪が不満ならあの桜の木を見てくれ。花が咲いたようになっているから綺麗だろう」
「木って、裏庭のあの大きな木ですか? 枯れ木に雪が降り積もったようにしか見えませんが」
「だから、雪が積もってるから花が咲いているように見えるんじゃないか。分からないかい?」
「はぁ……」
まったく分からないといった様子で、彼女が答える。
この前は頭の回転が速い娘かと思ったが、意外と頭はお固いようだ。
仕方ない、ちょっとばかり説明してやるとするか。
「いいかい咲夜、外の世界には『雪』という歌がある。この歌は知ってるか?」
「ええ、小さい頃に聞いた事があります。それがどうかしましたか?」
「その歌の一番の歌詞に『山も野原も綿帽子かぶり 枯れ木は残らず花が咲く』というやつがある。この『花が咲く』というのは、おそらく枯れ木に雪が積もるという事だろう。つまり、雪が積もった枯れ木がまるで花が咲いたようになっているという事を表しているんだ」
「だからあの木も花が咲いているようだ、と?」
「その通り、お分かりいただけたようだね」
そう言って、彼女の方へと顔を向けた……が、彼女は未だに分かっていない様子で僕の方を見ている。
「……どうも分かりませんね」
「分からないって、何処がだい?」
「だって、枯れ木に雪が積もってもそれは枯れ木でしょう。花を見るなら花が咲くのを待って、本物を見たほうがいいでしょうに」
「いやだから、これはそういう事じゃなくてだね……。それとあの桜の木は白い花が咲くから、春まで待ってもあの風景とあまり変わらないよ。それと、今の状況をよく考えてみたまえ」
「今の状況と言われましても、何かあるんですか?」
「大有りだとも! いいかい、まずは今雪が降っている。そして次に十六夜、つまり君がここにいる。さらに、桜の木に雪が積もって花が咲いたようになっているんだ」
「……つまり、雪月花が揃っている」
「そう、そうだ。雪月花が揃っている状態で酒を飲めるなんてのは最高の贅沢だからね、それを不満に思う奴はいないはずさ。もしそれでも不満なら、もう僕でも見ながら飲むんだね」
「店主さんを見ながら飲んでも、酒の味が分からなくなりそうですので遠慮しておきますわ」
「ひどいな」
「事実を言ったまでです」
そう言いつつ、彼女も止めていた手を動かして酒を飲み始めた。
……雪は、未だに降り続いている。
ああ、またあの半霊少女でも家に来ないものだろうか。
そしたら楽して、言葉通り酒でも飲みながら雪かき出来るのに。
「そういえば咲夜、紅魔館では雪かきはどうしているんだい? 何かコツとかがあれば是非教えてくれ」
「雪かきですか? 雪かきは妖精メイドたちの管轄なので、生憎とコツは分かりませんわ」
「そうか、それは残念だよ。……ところで、君が今ここにいるという事は君の仕事はその妖精メイドたちが代わっているという事でいいのかな?」
「一応はそうですが、彼女達では私の仕事の十分の一もこなせないでしょうね」
「……早く帰った方がいいんじゃないか、君」
「大丈夫です、うちには優秀な門番と悪魔がいますから。それにこんなお酒を目の前にして帰れなんて、ひどい人」
そういう問題なんだろうか。
おそらく強制労働を強いられているであろう名も知らぬ門番と悪魔に心の中で祈りを捧げつつ、とりあえず彼女と会話を進める事にする。
「僕は半分は妖怪だ。それに、君のお嬢様だっていい加減お待ちかねなんじゃないかな」
「その点に関しては確かに心配ですわ。でも、この酒を飲み終わるまでは帰りません」
「何でだい?」
「だって、雪月花が揃っているんでしょう? 私がいなくなってしまえば、それが崩れてしまうじゃないですか」
「いやまあ、それはそうなんだけど」
「安心してくださいな、ちゃんとお酒を飲んだら帰りますので」
「……まあ、君がそれでいいなら別にいいか」
二人で、話しながら酒を飲む。
一本だけしかない酒を二人で飲めば案外早く無くなるかと思ったが、僕も彼女もちびちびと飲んでいたのでまだ三分の一ほど残っている。
雪と、月と、花を見ながらのお酒。
流石にこの月をじっと見つめながら飲む訳にもいかないので、大抵は雪を見ながらの晩酌だったが。
そんな感じで、ゆっくりと、ゆっくりと時が過ぎていった。
「……あら、お酒がもうありませんね」
数分ほど経った後、彼女は空になったお猪口を傾けながらそう言った。
見てみると、確かに酒の瓶も空になってしまっている。
「おや、本当だね。それじゃもう行くのかい?」
「そうですねぇ……。あ、でもあなたのお猪口にはまだ残っているようで」
「言っとくけどあげないよ、僕の飲みかけだしね」
「分かっています、冗談です」
そう言って、彼女はお猪口を縁側に置いて立ち上がった。
少し酔っているらしく顔は少し赤くなっているが、それでも体の姿勢をピシッとさせている点は流石瀟洒なメイドという事だろうか。
「それでは店主さん、そろそろ失礼致します」
「ああ、気をつけて帰るといい。……と、その前にちょっといいかい」
ちょっと気になった事があったので、帰ろうとした彼女を呼び止める。
「どうかしました?」
「いやなに、結局君は何を肴にして酒を飲んでいたのかと気になってね」
「……はい?」
実を言うと、僕は飲んでいる時はあまり彼女の方を見ていなかった。
だから彼女が何を見ていたのかは分からないし、彼女がどうやって酒を飲んでいたのかも分からない。
肴が云々とうるさく言っていた彼女が結局どうしたのか、少しばかり気になったのもしょうがない事だろう。
「ほら、肴がどうしたと色々言ってたじゃないか。それで結局何を見ながら飲んだのか気になった……というだけの事だよ」
「私ですか? そうですねぇ……」
僕の問いに少しばかり考えるような仕草を見せた後、彼女は口を開いてこう言った。
「私は、雨を見ていました」
……雨?
今日は雨なんて降っていない。
一体、この少女は何を言っているのだろう。
「雨なんて降ってないだろう」
「いえ、とても眺めの良い雨を見ながら飲んでいました。とても長い間降り続いているような、そんな雨を」
「……本当かい?」
「勿論本当ですわ。店主さんこそ、何を見ながら飲んでいたんですか?」
「僕はもっぱら雪を見ていたよ。でも、ずっと見ていても雨なんて見えなかったけど」
「それじゃ、きっと店主さんには見えない雨なんでしょう」
「そんなものなのかな」
「ええ、そんなものなんです」
何か納得出来ないが、まあいい。
理解出来ない事は考えないに限る。
「咲夜、引き止めて悪かったね。もう行っても構わないよ」
「はい、分かりました。それではかぼちゃの方を三個ほど頂いていきますので、お代の方を後日ご連絡ください」
「ああ、分かってる。気をつけて帰るといい」
「ありがとうございます。それでは店主さん、失礼致しますわ」
その言葉と共に、彼女の姿は無くなる。
……いつもの事だが謎の多い少女だ。
時々、理解出来ないような行動を取る事もある。
今日だって、降っているはずもない雨を見ながら酒を飲んだと言っていた。
そう、雨は降ってはいない。
降ってはいなかった。
「眺めの良い、長く降った雨ねえ」
長い雨は、文字通り長雨とも書く。
長雨はながめとも言い、眺めと掛けられる事も多い。
そして、長雨の表記には霖という漢字が使われる事もあるのだ。
霖。
僕の名前にも使われている文字。
長雨を、霖を見ながら酒を飲んだという事は。
「……まったく、彼女は何を考えているのかな」
ああ、もう。
理解出来ない。
理解出来なければ、考えなければいい。
そうだ、考えなければいい。
そんな僕のポリシーに従っておけば、間違いは無いのだから。
分からない事を考えようとすると、余計に疲れるだけだ。
ただ、ただ一つだけ答えるとするならば。
「……次は、月でも見ながら酒を飲むとしようか」
そう言って、僕は最後の一杯を飲み干した。
あとがき
はい、という事でSSはいかがでしたか?
現在絶賛スランプ中で、数日ほど悩んでこのSSを書きあげました。
うーん、どうにも難しい。
やっぱりSSって難しいですねぇ・・・精進せねば。
それでは、時間も無いので今回はここまで。
皆様、また次回の日記でお会いしましょう。
また次回~!
最近はいろいろな事情が重なり、SSを書くことすらままならぬ状況になっていて・・・
SSを書ける状況になっても、どうやらスランプのようであまりネタも出ず・・・今日までかかってしまいました。
大変申し訳ございません!
これからも忙しい期間が続くので、更新もかなり不定期になってしまうかもしれませんが出来ればご了承ください。
皆様、どうかこれからもギュルヴィをよろしくお願いいたします!
さて、それではコメント&拍手返信に移りましょう。
コメント
キンシ さん>
良作でしたね!
俺は最後まで読み終えて、
ちょっと泣いた・゚・(ノД`)・゚・。
もっとこのカップリングの話を見たいなー
コメントありがとうございます!
楽しんでいただけたようで何よりですが、どうも百合は書きにくくて・・・orz
とりあえず、落ち着いた頃にまた挑戦してみようかと思います。
こーいち さん>
お久しぶりです。読みましたよ~^^
すごくほのぼのとした感じで、読んでるこっちもとっても和んじゃいました(≧∀≦)
大晦日の静かな雰囲気が出ていて良かったと思います!
僕も東方やってみようかなぁ………
と、いうわけで、それではっ
コメントありがとうございます!
大晦日って、何だかこう言い表し難い雰囲気ですよね。
そんな感じが表れていたなら、こちらとしても嬉しい限りです。
東方はぜひやってみてください!おススメしますよ!
狸里モスマン さん>
遅れましたが、あけましておめでとうございます。
ホノボノとした日常SSでいいですねぇ。
また自分もまったりお正月過ごしたい…!
羨ましい!
コメントどうもありがとうございます。
俺もまた、正月に戻ってゆっくりと休みたいです・・・
あ、でもそうするとまた地獄を過ごさなきゃならんのかorz
蒼煌の月 さん>
友希が来てることに今さっき気が付きました…馬鹿な奴ですみません><。
なにとぞよろしくお願い致します(汗
自分もそのうち何でもいいからSSを書いてみたいです…が、意外と難しいorz
頑張って下さい!
いえいえ、こちらこそよろしくお願いいたします。
SSは、確かに難しいですよねぇ・・・
もうホント、上手いSSを書ける人が羨ましい!妬ましい!(ぇ
応援ありがとうございます!頑張りますよ!
拍手コメント
- さん>
いかにも二人らしい年の越し方な感じが良かったです。魔理霖はこういう雰囲気が一番似合いますよねぇ
拍手ありがとうございます!
魔理霖は書きやすいんですが、どうにもうまく雰囲気を出しづらいんですよね。
甘々にしようとすると、どうにも詰まって・・・
やっぱり、ほどほどが一番ですかねぇ。
それと、リンクを1件追加しました。
『オーバーボーダーあらかると様』
東方は扱ってないようですが、バカテスやシャナなどの面白い二次創作SSを掲載なされています。
是非、一度見てみてくださいね!
さて、更新が遅れたお詫びに今回も載せます。
ちなみに咲霖SSです。
ああ、咲夜さんって難しい・・・orz
SSは追記からどうぞ~
はい、という事で咲霖SSに初挑戦です。
咲夜さんって、書こうとするとどうも難しい・・・
SSを見たいという方はこのまま画面をスクロールさせてください。
それでは、どうぞ~
倉庫を漁っていると一本の酒を見つけた。
何年か前に霧雨の親父さんから貰ったもので、魔理沙や霊夢たちが普段飲んでいるような酒とは価値が数段違うような銘酒だ。
そんな物を何故僕は倉庫にしまっていたのかと少々首を捻ったが、魔理沙たちに飲まれないようここに隠した事を早々に思い出したのでそんな疑問は速攻で捨て去る事にする。
とにかく、これほどまでの酒を見つけたからには飲まないと言う手はない。
誰も店に来ていない時に見つけたのは僥倖であり、こんな物を一人で飲めるという贅沢を味わえるのだ。
あえて言うなら今現在これに見合うだけの肴が無い事だけが不満だが、流石にそんな贅沢を言ってもしょうがないだろう。
それに、美味い酒を一人で静かに飲める。これほどまでの贅沢が他にあるだろうか。
騒がしい紅白や白黒から見れば何処がいいのか分からないのかもしれないが、僕から言わせてもらえれば騒がしく酒を飲む事の方が分からない。
別に誰かと酒を飲むのが嫌な訳ではないが、それでも鯨飲馬食でうるさく酒を飲むのは嫌いだ。
そういう酒の飲み方は天狗との花見で嫌と言うほど体験済みだし、嫌と言うほど嫌いになっている。
……ああ、いつの間にか話がずれてしまった。
とにかく早く店に戻ってこの酒を飲もう。
さっきはいい肴が無いと思ったが、外を見ればいつの間にか雪が降っている。
雪見酒。
ありきたりな飲み方ではあるが、中々風情がある。
そんな事を考えながら、僕は一本の酒を抱えて我が愛しの店へと戻っていった。
何を望んで、酒を飲む
著者:ギュルヴィ
お猪口と酒を盆に置き、裏庭の縁側に持っていく。
裏庭には雪が若干ながらも既に降り積もり、既に銀世界の様相をかもし出している。
明日は雪かきに勤しむ日になりそうだ。
……いや、明日の事を考えるのはやめよう。せっかくの酒がまずくなってしまうじゃないか。
雪かきと言う単語を無理やり頭から排除して、お猪口に酒を注いだ。
そして雪を見ながら、お猪口の中身をぐいっとあおる。
「……美味い」
……思わず声に出してしまう。
それほどまでに、この酒は美味い。
この酒についてとやかく言うのは、もはや意味の無い事だろう。
本当にいい物というのは言葉では表せない物なのだ。
この酒が美味しいと伝えるために僕が出来るのは、せめて美味そうに酒を飲む事ぐらいである。
そう思い早速おかわりを注ごうとした、その時。
「あれ?」
僕の手から、お猪口が消えた。
落したのではなく、本当に消えた。
こんな芸当が出来る人妖は二人ほど心当たりがあるが、そのうちの大本命である八雲紫は今頃冬眠しているはずなので彼女ではありえない。
となると、容疑者は一人しかいない訳で。
その容疑者がいるとすれば、おそらく……
「あら店主さん、こんなところで店番もせず何をしているのかしら」
……予想通り、後ろを振り返ると完璧で瀟洒なメイドの姿があった。
無論手に僕のお猪口を持っている。
十六夜咲夜。
完璧で瀟洒な紅魔館のメイド長であり、僕の店の数少ない”客の”常連だ。
「君こそ、いきなりお猪口を取るなんて何を考えているんだ。早くそれを返してくれ」
「お断りしますわ。そんなに美味しそうなお酒なんですもの、あなた一人で飲むにはもったいないと思いません?」
次の瞬間、今度は酒が手元から消えた。
その行き先は当然彼女の手の中である。
「……咲夜、君は僕の至福の一時を邪魔して楽しいかい」
「まあ、人聞きの悪い。私はただ一緒にその時間を楽しみたいとお願いしているだけですのに」
「そもそも君はここに客として来たのかな、酒を飲みにきたのかな」
「勿論客として。お嬢様が突然かぼちゃが欲しいと言い出しまして、ここにならあるかと思って来たのですが」
手に酒とお猪口を持ちながら、彼女は話す。
そんな事を話しながらお猪口に酒を注ごうとしているあたり、”客として来たけど酒を見つけたから飲みたい”という事だろうか。
「かぼちゃなら台所にあるよ。それはともかく、早くそれを返して……」
「あら、このお酒美味しい」
「……」
「店主さん、どうかしました?」
「……いや、何でもない」
どうしてこう、僕の周りの少女達は。
話を聞かない云々以前に、そのお猪口は元々僕が使っていた奴で、それをそのまま彼女は使った訳で。
ひょっとして僕は男として見られていないんじゃないのかとさえ思う。
「それで店主さん、結局ご一緒しても?」
「別に構わないよ。騒ぎさえしなければ、ね」
「勿論です」
そう言って、彼女は僕の隣に腰を下ろす。
いつの間にか手にはお猪口を二つ持っており、そのうちの一つに酒を注いで僕に手渡してきた。
何時の間に取ってきたとか、そういう事はいつもの事なので考えない。
理解出来ない事は考えないに限るのだ。
「そういえば、肴は何ですか? 何処にも無いようですが」
「肴かい? ちゃんとあるじゃないか、よく周りを見てくれ」
「周り、と言われましても見る限り銀世界と家屋の織り成す風景しか見えません」
「なら空を見てくれ、それなら分かるだろう」
「雲が見えますわ」
「雲じゃない、他に見えるものだ」
「家の屋根も見えますね」
「違う、屋根でもない」
「あら、屋根に蜘蛛の巣が。もうちょっと掃除した方がよろしいのでは?」
「蜘蛛の巣でもない、雪だ雪。雪を肴にして飲んでるんだ」
いくら何でも蜘蛛の巣を肴にはしないだろう。
もちろん彼女も本気で言っている訳ではないのだろうが、それでもこの少女は何かずれている気がしてならない。
どこかの天才よろしく、完璧な人間とはどこかがおかしいものなんだろうか。
「分かってます、ほんのいかした冗談ですわ」
「どうも君が言うと冗談に聞こえなくてね。……それでどうだい、雪見酒は不満かな?」
「不満と言う訳ではありませんが、こう……物足りない気がします。せめて月が出ていればよいのですが」
「月、かい」
「えぇ、月を見たいですね。それも綺麗な、眩しい位の十五夜が」
……月か。
確かにそんな月を見ながらこんな酒を飲めれば最高だが、今は雪が降っている。
雪が降っているという事は雲が出ているという事であり、雲が出ている限り月が見える事はない。
雲の切れ目にひょっこりと見えるという事もあるが、雲は空全体を覆っていてその切れ目さえなかなか現れそうにない。
今日月を見る事は、ほぼ絶望的だろう。
「月は、今日は見れないだろうなぁ」
「見れませんかねぇ」
「十六夜なら君がいるけど、君を見ても仕方がないし」
「あら、何か失礼な事を言われたような気がします」
「気のせいだと思うよ」
そんな事を話しながら、二人で酒を飲む。
酒は美味いし、誰かが騒ぐ事もない。
まさしく僕の理想的な酒の飲み方である。
……出来れば、もうちょっと情緒のある人と飲みたかったと言うのは流石に贅沢か。
そんな事も考えながら酒を飲んでいると、彼女が話しかけてきた。
「店主さん、お台所をお借りしてもいいですか? やはり何か肴を作りたいのですが……」
……ふむ。
紅魔館のメイド長ともなれば、料理の腕も相当なものだろう。
そんな料理を食べながら飲むのも悪くは無い、悪くは無いのだが……
「貸してもいいが、生憎食料がさっき言ったかぼちゃしかなくてね。君のお嬢様の願いが叶えられなくてもいいのならご自由にどうぞ」
「かぼちゃだけって、普段食べているものとかもあるでしょう?」
「残念ながら僕は食べなくても生きていける体質なんだよ。食べるものといったら、酒の肴や魔理沙達の作る飯ぐらいしかない」
そう、僕はなぜか食べ物を食べる必要性が無い。
だから普段から食べ物を三食食べる習慣とかはないし、普段から食べ物を備蓄している訳でもないのだ。
ただ、たまに魔理沙達が飯を作る時があるので時々食料の補充はしているが。
「……それじゃ、何か他に肴になりそうな物は?」
「そうだね、雪が不満ならあの桜の木を見てくれ。花が咲いたようになっているから綺麗だろう」
「木って、裏庭のあの大きな木ですか? 枯れ木に雪が降り積もったようにしか見えませんが」
「だから、雪が積もってるから花が咲いているように見えるんじゃないか。分からないかい?」
「はぁ……」
まったく分からないといった様子で、彼女が答える。
この前は頭の回転が速い娘かと思ったが、意外と頭はお固いようだ。
仕方ない、ちょっとばかり説明してやるとするか。
「いいかい咲夜、外の世界には『雪』という歌がある。この歌は知ってるか?」
「ええ、小さい頃に聞いた事があります。それがどうかしましたか?」
「その歌の一番の歌詞に『山も野原も綿帽子かぶり 枯れ木は残らず花が咲く』というやつがある。この『花が咲く』というのは、おそらく枯れ木に雪が積もるという事だろう。つまり、雪が積もった枯れ木がまるで花が咲いたようになっているという事を表しているんだ」
「だからあの木も花が咲いているようだ、と?」
「その通り、お分かりいただけたようだね」
そう言って、彼女の方へと顔を向けた……が、彼女は未だに分かっていない様子で僕の方を見ている。
「……どうも分かりませんね」
「分からないって、何処がだい?」
「だって、枯れ木に雪が積もってもそれは枯れ木でしょう。花を見るなら花が咲くのを待って、本物を見たほうがいいでしょうに」
「いやだから、これはそういう事じゃなくてだね……。それとあの桜の木は白い花が咲くから、春まで待ってもあの風景とあまり変わらないよ。それと、今の状況をよく考えてみたまえ」
「今の状況と言われましても、何かあるんですか?」
「大有りだとも! いいかい、まずは今雪が降っている。そして次に十六夜、つまり君がここにいる。さらに、桜の木に雪が積もって花が咲いたようになっているんだ」
「……つまり、雪月花が揃っている」
「そう、そうだ。雪月花が揃っている状態で酒を飲めるなんてのは最高の贅沢だからね、それを不満に思う奴はいないはずさ。もしそれでも不満なら、もう僕でも見ながら飲むんだね」
「店主さんを見ながら飲んでも、酒の味が分からなくなりそうですので遠慮しておきますわ」
「ひどいな」
「事実を言ったまでです」
そう言いつつ、彼女も止めていた手を動かして酒を飲み始めた。
……雪は、未だに降り続いている。
ああ、またあの半霊少女でも家に来ないものだろうか。
そしたら楽して、言葉通り酒でも飲みながら雪かき出来るのに。
「そういえば咲夜、紅魔館では雪かきはどうしているんだい? 何かコツとかがあれば是非教えてくれ」
「雪かきですか? 雪かきは妖精メイドたちの管轄なので、生憎とコツは分かりませんわ」
「そうか、それは残念だよ。……ところで、君が今ここにいるという事は君の仕事はその妖精メイドたちが代わっているという事でいいのかな?」
「一応はそうですが、彼女達では私の仕事の十分の一もこなせないでしょうね」
「……早く帰った方がいいんじゃないか、君」
「大丈夫です、うちには優秀な門番と悪魔がいますから。それにこんなお酒を目の前にして帰れなんて、ひどい人」
そういう問題なんだろうか。
おそらく強制労働を強いられているであろう名も知らぬ門番と悪魔に心の中で祈りを捧げつつ、とりあえず彼女と会話を進める事にする。
「僕は半分は妖怪だ。それに、君のお嬢様だっていい加減お待ちかねなんじゃないかな」
「その点に関しては確かに心配ですわ。でも、この酒を飲み終わるまでは帰りません」
「何でだい?」
「だって、雪月花が揃っているんでしょう? 私がいなくなってしまえば、それが崩れてしまうじゃないですか」
「いやまあ、それはそうなんだけど」
「安心してくださいな、ちゃんとお酒を飲んだら帰りますので」
「……まあ、君がそれでいいなら別にいいか」
二人で、話しながら酒を飲む。
一本だけしかない酒を二人で飲めば案外早く無くなるかと思ったが、僕も彼女もちびちびと飲んでいたのでまだ三分の一ほど残っている。
雪と、月と、花を見ながらのお酒。
流石にこの月をじっと見つめながら飲む訳にもいかないので、大抵は雪を見ながらの晩酌だったが。
そんな感じで、ゆっくりと、ゆっくりと時が過ぎていった。
「……あら、お酒がもうありませんね」
数分ほど経った後、彼女は空になったお猪口を傾けながらそう言った。
見てみると、確かに酒の瓶も空になってしまっている。
「おや、本当だね。それじゃもう行くのかい?」
「そうですねぇ……。あ、でもあなたのお猪口にはまだ残っているようで」
「言っとくけどあげないよ、僕の飲みかけだしね」
「分かっています、冗談です」
そう言って、彼女はお猪口を縁側に置いて立ち上がった。
少し酔っているらしく顔は少し赤くなっているが、それでも体の姿勢をピシッとさせている点は流石瀟洒なメイドという事だろうか。
「それでは店主さん、そろそろ失礼致します」
「ああ、気をつけて帰るといい。……と、その前にちょっといいかい」
ちょっと気になった事があったので、帰ろうとした彼女を呼び止める。
「どうかしました?」
「いやなに、結局君は何を肴にして酒を飲んでいたのかと気になってね」
「……はい?」
実を言うと、僕は飲んでいる時はあまり彼女の方を見ていなかった。
だから彼女が何を見ていたのかは分からないし、彼女がどうやって酒を飲んでいたのかも分からない。
肴が云々とうるさく言っていた彼女が結局どうしたのか、少しばかり気になったのもしょうがない事だろう。
「ほら、肴がどうしたと色々言ってたじゃないか。それで結局何を見ながら飲んだのか気になった……というだけの事だよ」
「私ですか? そうですねぇ……」
僕の問いに少しばかり考えるような仕草を見せた後、彼女は口を開いてこう言った。
「私は、雨を見ていました」
……雨?
今日は雨なんて降っていない。
一体、この少女は何を言っているのだろう。
「雨なんて降ってないだろう」
「いえ、とても眺めの良い雨を見ながら飲んでいました。とても長い間降り続いているような、そんな雨を」
「……本当かい?」
「勿論本当ですわ。店主さんこそ、何を見ながら飲んでいたんですか?」
「僕はもっぱら雪を見ていたよ。でも、ずっと見ていても雨なんて見えなかったけど」
「それじゃ、きっと店主さんには見えない雨なんでしょう」
「そんなものなのかな」
「ええ、そんなものなんです」
何か納得出来ないが、まあいい。
理解出来ない事は考えないに限る。
「咲夜、引き止めて悪かったね。もう行っても構わないよ」
「はい、分かりました。それではかぼちゃの方を三個ほど頂いていきますので、お代の方を後日ご連絡ください」
「ああ、分かってる。気をつけて帰るといい」
「ありがとうございます。それでは店主さん、失礼致しますわ」
その言葉と共に、彼女の姿は無くなる。
……いつもの事だが謎の多い少女だ。
時々、理解出来ないような行動を取る事もある。
今日だって、降っているはずもない雨を見ながら酒を飲んだと言っていた。
そう、雨は降ってはいない。
降ってはいなかった。
「眺めの良い、長く降った雨ねえ」
長い雨は、文字通り長雨とも書く。
長雨はながめとも言い、眺めと掛けられる事も多い。
そして、長雨の表記には霖という漢字が使われる事もあるのだ。
霖。
僕の名前にも使われている文字。
長雨を、霖を見ながら酒を飲んだという事は。
「……まったく、彼女は何を考えているのかな」
ああ、もう。
理解出来ない。
理解出来なければ、考えなければいい。
そうだ、考えなければいい。
そんな僕のポリシーに従っておけば、間違いは無いのだから。
分からない事を考えようとすると、余計に疲れるだけだ。
ただ、ただ一つだけ答えるとするならば。
「……次は、月でも見ながら酒を飲むとしようか」
そう言って、僕は最後の一杯を飲み干した。
あとがき
はい、という事でSSはいかがでしたか?
現在絶賛スランプ中で、数日ほど悩んでこのSSを書きあげました。
うーん、どうにも難しい。
やっぱりSSって難しいですねぇ・・・精進せねば。
それでは、時間も無いので今回はここまで。
皆様、また次回の日記でお会いしましょう。
また次回~!
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